ダン・ピアソン氏の講演に思う

自然を生かす

 ピアソン氏のいう自然は、私たちが通常考えている自然界だけでなく先人たちが築き上げてきた文化や伝統なども含めているのではと勝手に受け止めました。これらは現在の私たちに違和感なく、それこそ自然に受け入れているものだからです。ここで印象に残った話題をいくつかご紹介しますが、私の記憶違いや誤った解釈をしている可能性がありますのであらかじめご了承下さい。


 イギリス南部?の荒涼とした海岸近くにある庭の説明がありました。近くには原子力発電所があり、まともな樹木が生きていけないような場所だそうですが、オーナーはそうした劣悪ともいえる環境に逆らうことなく、むしろそうした景観のなかに溶け込むような植物や素材、手作りの金属加工品などを配置させていて、氏が大変気に入っているところのひとつだそうです。私たちなら、防風林や垣根を張り巡らし、恵まれた環境にある庭と同じものを作ろうと考えます。

 イングリッシュガーデンのひとつの試みとして、緩やかな丘陵が幾重にも連なるイングランドの代表的な景色とそこに見られる石積みの雰囲気を巧みに取り入れた作品が紹介されました。敷地の左右に園路を設け、それに対してほぼ直行するように緩やかな起伏がいくつも登場させ、ここには主に芝やグラウンドカバープランツを使うようです。また石積みをイメージした常緑樹?の生け垣を同様の手法で配置することにより、来園者はときどき視界を遮られながらも変化する景色を楽しむことができるよう工夫されています。おそらく帰りは往路とは違うもうひとつの園路を歩きたくなるに違いありません。

ダンピアソンの話より

これは氏のお話に基づいたイメージにすぎません

 氏の父親が購入した古い住宅にも庭園があったそうです。長い間放置されていたので雑草などを取り除き整理していたとき、おそらく当時そこには素晴らしい庭があったのではと立ち止まって考えたこと、そしてそれを跡形なく改造してしまった事への反省を述べられていました。つまり継承されてきた文化や物事に対する考え方をそう簡単に捨てて良いのだろうか、自然に対して身勝手なくらい手を入れて良いのだろうかと私たちに語りかけてくれたような気がします。


その後〜十勝千年の森で

 この講演から数年経って、十勝千年の森をツアー見学したときのこと。以前は芝生で緩斜面を覆っていた場所の変貌に驚愕したのです。氏の指示によって人為的に造成された独特な起伏は、とても私のような凡人には想像すら出来ない形状です。おそらく先のイメージを膨らませ実践したのではないでしょうか。なだらかな起伏を背面で鋭くそぎ落とし(写真最下段左)、ふたたび盛り上げていく。これで斜面の単調さを解消する役割を持たせているのではと思いました。節操のないデザイナーが模倣しそうです。

十勝千年の森

このときは起伏の様子を推し量るため一行には付いていかず撮影。さながら波間に見え隠れする磯舟のごとく・・
ダンピアソンは北斎にヒントを得たのでしょうか。
千年の森の起伏葛飾北斎の絵