本多さんは趣味として始めたガーデニングですが、この世界でもきちんとした自分の考えを持っています。それを収納のプロという目を通して、室内のいたるところに取り入れているそうです。インテリアに精通する私の先輩が「インテリアとガーデンは共通したところが多い。センスが常に問われている。」と言っていたのを思い出しました。
異なる分野であってもそれらを結びつけるというのは簡単なことではありませんが、常に新しい発想を求めている人には違う世界は宝の山なのかもしてません。さて本多さんがねらいを定めた手法とは何でしょうか。
いずれもガーデナーの皆さんにとってはおなじみの用語ですね。これらをどういった捉え方をして、どのように取り入れたのでしょうか。番組では例を示して解説してくれました。
庭では最も注目されるところで、オーナーが一番力を入れる場所でもあります。したがって室内ではみどり豊かな大型の観葉植物を視線の集まる部屋のコーナーに配置するとよいとのこと。確かにコーナーは室内に入ってくると一番奥行きを感じる場所でもあります。
ここで感心したのは、このフォーカルポイントを逆手に取った発想でした。あまり見せたくないもの、注目を浴びたくないものをそれと反対の位置に置くという考え方です。適切な表現ではありませんが、フォーカルポイントによって擬似的な死角をつくる効果をねらっています。
サイドボードのガラス部分に貼られた格子状のフィルム。目を凝らすと内側にある収納物がどうにか見える程度の遮蔽率です。庭の場合、手前側にあるグラス(grass) が、向こう側にある植物をさりでなく隠し、しかも遠近感を演出しているという効果を応用したそうです。圧迫感を感じさせない程度に遮蔽することで、空間の拡がりを損ねず目的を果たす手法なのでしょうね。
樹木の世界でもこれとよく似た話があります。遮蔽目的で生け垣をつくりたい、道路から駐車帯がみえないように街路樹を植えたいなどという事例です。確かに密植すればよいのでしょうが、予算やその後の管理を考えると問題があります。一定の間隔を開けて植えるとどうなるでしょうか。通行する人や車からは手前に植えた樹木に視線がいき、ストレートにその向こう側は見ない(見ない)ことのほうが多いのです。少しでも覗かれないようにしたければブロックや板で完全に遮蔽するしかありません。そのかわり中は圧迫感のある空間となります。
どちらかといえば細長く奥行きのないボーダーガーデンの場合も、園路側に低い草花、奥のほうに背丈の高い草花や樹木を配置し、四季折々の花や姿を楽しめるようにするのが基本的な考え方です。本多さんはこの考えを食器棚のグラス (glass) の収納に応用しました。ただこのアイデアをそのまま採用すると、棚の奥に収めた背の高いグラスは、取り出すのに大変です。そこで、水平方向と奥行き方向を取り替えて配置したそうです。実用的になっただけでなく、グラスの高低差がアクセントになって「眺めて楽しめる食器棚」に変身するという効果もでたのです。
異なる分野からのアイデアを発想の転換によって解決しただけでなく、新たな付加価値を手に入れました。多くの人たちは結果を聞いてなるほどとうなずくでしょうが、なにもないところからここまでたどり着く人はそう多くはないと思います。なぜでしょうか。