本多弘美さんの収納術に学ぶ

無駄のない動き

動線を考えよう

 収納と聞くと私たちはどうしても「どこに何を整理して収めるか」「どこにどう収めると綺麗に見えるか」といった静的なことを考えてしまいます。本多さんは、なぜ収納するのかを考え、日常頻繁に使うモノはどこにあるのが望ましいかからスタートしています。
 通常は洗面所にしか置かないタオルが下駄箱の中にあったり、寝室や納戸にあるはずのバッグ類が玄関に置かれていたりしていますが、私たちの「常識」では考えられないことです。それを利用する人たちにとってどこにあることが便利かが大切で、都合の良い場所に置かれていればすばやく利用でき、しかも将来にわたって乱雑になったり、仕舞い忘れが起きないと思います。

 収納の第1歩は、「人の移動や動作」を考え、そこにモノを当てはめていくことが肝要なのでしょうね。モノの方からすると「は安住の地」を得ることになります。さて、ここに登場するタオルは、不意の雨に濡れて帰宅した家族が、その場で拭くことができるというアイデアだそうです。小さなお子さんや雨のなかでもガーデニングに励む方がいるお宅には大変便利だと思います。ご主人は、廊下を濡らしながらドタバタと洗面所まで走っていかずに済み、なによりも奥様のお叱りを受けないという特典付き。

冷蔵庫のドアに


ちょっと一言 〜 はずかしいのはどちら

 テレビ番組で、一般家庭のある奥さんが「うちの主人はそそっかしいので、左右違う靴下を平気ではいて出かけるんですよ。本当に恥ずかしいったらありゃしない!」と息巻いていました。
 それを見ていた私の母が苦笑しながら一言。「自分の至らなさを世間にさらしているようなもの。」つまり、洗濯した奥さんが、左右セットで折りたたんでおけば問題は起きないという意味で。


「慣れ」に潜むワナ

 タオルの他に、冷蔵庫のバターの話は印象的でした。いつも使うものは取り出しやすいところに配置することは誰でもそうしていると思いますが、もう一歩進めてドア越しに手を入れただけで取り出せるというアイデア。収納に、無駄な動きをしなくて済むという動的要素を組み込んでいます。

(1)不精者・・・手抜きをして質の低い仕事(家事)をする人
(2)一般人・・・手抜きをせずそれなりの仕事(家事)をする人
(3)優れ者・・・手抜きをして質の高い仕事(家事)をする人

 仕事でも家事(これも仕事ですが)でも、長年同じ繰り返しをしていると、変に慣れてそれが一番いい方法だと思いこんでしまい、何の抵抗もなくタオルを洗面所に取りに行きます。そうなると新しい発想など生まれません。どこの職場でもある話ですが、新しい方法や道具を採用しようとすると現場から「今までのやり方が楽だ」「今使っているものが便利だ」という答えが返ってきます。ほんとうにそうなのかどうかを客観的に判断せず「慣れ」が邪魔をしていることが意外と多いのです。


ちょっと一言 〜 ほんとうに忙しいのか

 ある取引先の苗畑にお邪魔したときのこと。せわしなく現場の人たちが苗木を運んでいました。「いやぁ、景気がいいですね。出荷ですか?」と尋ねると、そうではなく場内でまた移動させているそうだ。確かに現場の方は汗をかくくらい「忙しい」のですが、残念ながら会社としては「忙しくない」という結論になります。その作業からは何の対価も得ないからです。現場の方には気の毒な表現ですが、「無駄な動き」にすぎません。管理者は苗木を何度も移動しなくて済むように計画し、適所に「収納」することが大切なのでしょうね。


ドタバタからの解放

 作業分析という言葉があります。人の動きを客観的に観察し「慣れ」に潜む無駄な動きを取り除き、身体や精神への負荷を和らげようとする手法。箸の上げ下げにケチを付けたり、こき使おうというわけではありません。手足の動き、動作の意味、所要時間など様々な角度から分析します。その結果をたとえば不必要な動きをしないための周辺整備(主な作業に使う道具、主な料理に使う調味料や容器などの適正な配列と収納)の根拠として使うのです。また作業手順を変えることによって時間の節減や不要な作業を取り除くことができるという優れものです。自分ではなかなか発見でませんが、忙しいときではなく時間に余裕のあるときに見つめてみると案外・・・。


ちょっと一言 〜 あわて者が忘れないために

 まさに私がそうなのですが、前の日にきちんと用意して置いた道具を忘れて出かけ失敗することもしばしば。外出時には必ずおきまりの棚をみて出勤するように決めているにもかかわらず、それを忘れてしまうからです。
 その後、必要なものは自動車の鍵(キーホルダー)と一緒に置いておけば忘れないことに気づく。鍵を忘れて車は発進できませんから。なるほど、それではバスで出かけるときはどうなるのでしょうね。