街路樹の話

使命を終えた街路樹の移植(1)

 適正な管理、養育をしたとしてもやがては根元が植栽枡(ます)いっぱいに肥大する時期がきます。歩道のスペースを利用している枡を広げることが出来ない場合は他の場所に移植するか伐採除去するを選択せざるを得ません。ここで問題になるのが地元住民の賛否とその運動に影響を受けている現状です。もともと制約を受けている都市空間で生かされている街路樹に一定の保全基準は必要だと思いますが、単に生きながらえさせたり、命ある植物を大切するという観点だけからでは本質を見失うことになります。

街路樹の植枡植枡の寸法

街路樹の標準的な植栽桝の形状と寸法(cm:右図)

 皆さんは、自宅で植物を鉢やプランター栽培していると思いますが、地上部を剪定して管理したとしても数年に一度は容器から引き抜き、ルーピングした(容器の内側周囲に巻き付いた)根や古い根を取り除き、元肥を混ぜた新しい用土で埋め戻さなければ、やがては衰弱して枯死することをご存じです。同じように限られた空間で生きている街路樹からすると、そのなかで耐えられなくなった根が歩道下の路盤を突き破り沿線民家の土地に進入すると非難を浴び、かといって小さな植木鉢と異なり植え替えなどは期待できません。その結果次のような事態となります。

1)根によって隆起した歩道の路盤

2)根によって亀裂を生じた歩道の路盤

3)押し広げられたコンクリート製の縁石

4)植え穴に収まりきれず地表でルーピングしている根

 このプラタナスの根元周:約180cm


 このような場合、行政に生かすことを前提として何とか解決して欲しいというのは非現実的な話しで、予算的にもとても無理でしょう。私たちは、大きくなりすぎた鉢植えの木をどうするのでしょう。より長く生かすために手狭な庭に無理矢理押し込むか、他人に押しつける方法しかありませんし、それもやがては破綻して切り倒すことになりそうです。

根元の寸法シラカバの樹形

上記プラタナスと同程度のシラカバ

大地に直接植えられているため、根の張りもよく、地表に露出した部分は直径2mほどに達している。
またこの木はかつて剪定管理されていたと思われ、樹高が低めに抑えられていたので、
自然放置のシラカバとは異なり風速40m/secの強風にも全く被害を受けなかった。

 この点で街路樹の場合は鉢植えの木とは様子が違います。その場所で存命させるために私たちの生活や行政の予算を圧迫するのであれば、膨大な管理費や移植経費を費やすべきではないと考えます。つまり、この段階で原則的には街路樹は寿命ではなく「耐用年数」という基準を導入し更新、除却、維持を決定なければならないと思います。また今年は、風速40〜50m/secをもたらした台風が北海道各地に大きな被害と教訓を残しました。数十年に一度といった確率と聞いていますが、都市部の緑化も例外ではありません。自然災害に対しては感情的な話や場当たり的な対策ではなく、科学的な検証や論拠に基づいて樹種、維持管理サイズ・形状などを確立して欲しいと願っています。

 岩見沢市では官民一体となって樹種や路線の周辺環境を考慮した管理のあり方を検討するため、幾通りかの試験剪定を行って管理施工業者の共通認識を計りながら進めているそうです。画一的な手法ではなく、都市の景観・環境と沿線住民の意識そして街路樹の存在意義との関係を有機的に結びつける取り組みに期待しています。