いいかえると植物地上部の葉の総量と根の総量とのバランスということです。ただし、ここでは根といっても水分や養分を吸い上げることのできる根をいいます。種をまいて苗を育てるとよくわかりますが、最初は自分の居場所を造り、体を固定するために根が出ます。水分しか吸収できないので、種の中に蓄えられている養分で成長するのが一般的です。いかに根が大切かを物語る本能的な営みですね。
なにかの理由で根が切られると成長が緩慢になったり停止します。条件が悪いと弱って枯れることもあります。先ほどのバランスが崩れたからです。従ってこれとは逆に地上部を芽摘み、芽欠きや剪定などで小さくすると、根の発育が緩慢になりますが、その代表的な例が盆栽ではないでしょうか。
鉢やビニールポットの苗木は、植え付けの際に根を切らずにすむので適期以外のときでも活着、成育に支障をきたさないとされています。ただしすべてがうまくいくとは限りません。
ビニールハウスや本州などの温暖なところで、十分な水と肥培管理の元に育てられた苗は、植え付けられた場所との落差が大きく適応できずに弱る場合があります。
販売適期をすぎるとルーピングといって行き場のなくなった根がポットの内周部分で、とぐろを巻いたように延び、水抜きの穴から出てきます。こうした苗をそのまま植え込むと新しい根が出づらく、成育に影響します。このような場合は植え付ける前に根の部分を解したり、古い部分を切除して発根を促します。
ポットのなかで養成したのではなく、出荷の時に間に合わせ的にポットに詰めた苗のことをいいます。見てくれや取り扱い重視をするあまり、入りきらないとの理由で根を極限まで切りつめているのですから、よいわけがありません。根さえ乾かなければ「ふるい根」*のほうが活着がよいくらいです。
(注)*「ふるい根」・・・根鉢部分の土をふるい落とした苗のこと。業界では開葉前または落葉後の落葉樹で小さいものはこの状態で植え付けることが多い。活動の停止した早春、常緑性針葉樹(マツ、トウヒ類)も同様で、道内だけでも年間何十万本以上植え付けられている植林用苗木のほとんどはこれです。
苗木を植え付けたり、植え替えたいのだがいつ頃がよいかという質問をよく受けます。北海道の場合は一般的に、落葉樹は早春(4〜5月)の落葉期または晩秋(10〜11月)の葉に色づく頃ないし落葉期とされていますが、厳密に言うと最適期は種類によって若干異なるようです。常緑樹は早春から開葉期前までとお盆明け(8月下旬〜9月中旬)とされています。
前者はなるほどと理解できますが、後者のお盆明けはどうしてなのでしょうか。この時期が最良というのではなく10月以降よりは活着する確率が高いということなのです。常緑樹は当然のこと冬でも葉を付けているので、翌年の春まで葉からは少しずつ水分が出ていきます(蒸散します)。一方、根は植え替えによって切られており、時期的には地温が低くなっていることから発根しません。したがって水分を吸い上げることができず徐々に脱水状態になりやすいのです。つまり先ほどのバランスが崩れているからです。
針葉樹の葉は広葉樹のようにすぐに葉がしおれないので、管理が疎かになりやすく、脱水して葉の色があせてきたときはすでに手遅れです。春先まで青々していたのに、暖かくなってきた6月にイチイの葉が色抜けしたように白っぽくなってきた話をよく聞きますが、このような事情に起因するのです。単に寒さで痛んだり枯れたりする場合は、葉が赤茶けてきます。