北国の気候

強い風は大敵!

(道内と長野県を比較)

 植物が越冬するために積雪の深さや推移が気温の次に重要な因子のひとつですが、冬だけでなく成育期を含め通年大きな影響を及ぼす因子に風の強さ(風速)を忘れてはなりません。まったくの無風状態が必ずしも良いとは限らないそうですが、成育期に常に強風にさらさされると、蒸散が盛んになって成長が抑制されたり樹形が風下方向に反り返るなどの障害が起こります。また土壌凍結のある地域では根からの吸水ができないために脱水し枯死したり先枯れすることがあります。特に常緑樹ではその傾向が強く、最低気温に基づくハーディネスナンバーを持っている植物でも大きな被害を受けるのです。さらに沿岸部では、一般的に内陸部に比べ風が強いため、成育障害だけでなく海水塩分の飛来によって大きな被害(潮害)を受けます。

 道内各地の年平均気温を地図(左)に表しました。これはほぼ最低気温の分布に相当していますが、植物の生産や植栽の難易を的確に表しているとは言い難い点があります。例えば、退潮性、耐寒性のある樹種を栽培するとき、日本海沿岸北部から稚内にかけての地域と道東内陸部とでは後者の地域の方が明らかに有利であるにもかかわらず、この図ではそうした傾向を読みとることは出来ません。それは風速という因子が考慮されていないからです。

年平均気温

 そこで気温に風速を考慮したリンケの体感温度の式を強引に使って年平均気温を補正したのが最下段の地図です。リンケの式は主に医療や住環境などを想定したもので植物に当てはまるとは限りませんし、年平均気温の補正に年平均風速をそのまま使って良いのかという疑問はあるので右図の数値自体は無視し、観測地の相対比較(色付きの丸)ということでご覧下さい。植物の成育という点ではおそらく気温も分布図よりは的を射た指標になるのではないかと思います。

 

平均風速の分布

 

風速を考慮した分布地図は次の通りとなります。これによって植物を最低気温だけを考慮したハーディネスナンバーでは語れない一面がみえてくると思います。

 

体感気温

 

 年債低気温と年平均風速について道内各地を「積雪と気温(2)」にしたがって厳寒地域と温暖地域に区分し、さらにそれぞれ沿岸部と内陸部別にプロットしたのが次のグラフです。年平均風速は内陸部では約1.5〜4m/secですが、沿岸部ではそれより強く、主要都市では稚内が約8m/secを記録しています。平均気温は最北にありながら暖流の影響もあり暖かいのですが、風が強いため植物の成育が難しいのが現状です。ただし、気温と違って地形的な影響を受けたり人為的な防風対策によってある程度軽減可能な因子なので、様々な工夫によって栽培・植栽がなされています。

 なお下図には比較のため本州の山岳地域に位置する長野県の主要観測地のデータを掲載しています。これによるとおおむね北海道の「温暖な沿岸部」に相当する環境といえますが、高温が続く夏季や多湿な梅雨を個別に考慮していないので注意して下さい。

最低気温と年平均風速